【インタビュー】鷲尾あさみ Vol.02

幼少期から26歳までを宮城で過ごし、2013年から松山に移り住み、現在は実の母が経営する飲食店「道後椿倶楽部」にて料理・接客の腕を磨く鷲尾氏。激変する生活環境の中でも常に輝きを放ち続ける、一風変わった女性像の「横顔」に触れる。

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インタビュー前編はこちらです。

居心地の良い空間にしていたい

道後椿倶楽部は道後にありますよね。
やっぱり道後ですから、観光客の方が多いですか?

いえ、道後椿倶楽部は地元のお客様がほとんどです。県外の方が来るとしても、地元のお客様が連れて来られる感じです。接待とか。
あえて入りにくくしてるからかな?「隠れ家」みたいな。

もちろん、お店の戦略としてですよね?

そうですね。
ちょっと入りにくいけど、入ってみたらアットホームな雰囲気でっていう感じを狙っています。楽しい、居心地の良い空間にしていたいです。

お店としての強みはなんですか?

飲食店として料理が美味しいのは大前提になると思うので、素材は厳選しています。野菜なんかも良いものを選んでますね。
あとは心地良い接客ですね。同じコーヒーを飲むにしても、そのコーヒーがどういったストーリーを持っているのかを知ってもらうことで付加価値が付きますよね。原産地とか生産者さんのこととかお話しながら、「より美味しく」感じていただけるような工夫をしています。

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なるほど
お店の雰囲気もすごくいいですよね。落ち着いた雰囲気を感じます。

ありがとうございます。母からよく言われるのが「お店の雰囲気を作るのはそこにいる人たち」という言葉です。ホントにそれをよく口にするので自然と私たちも意識するようになって。
だからって別に来店を断ったりはしないんですけどね。お客様を選ぶようなことは決してしないんですけど、母のそういった想いや理念がこのお店の雰囲気に自然な形で表れてるんじゃないかなと思います。おかげさまで素敵なお客様ばかりです。
道後椿倶楽部で働き始めた頃は、私も「ちゃんとしなきゃ」って緊張してたんですけど、こっちが緊張してしまうとお客様にもそれが伝わってしまうので良い雰囲気を保てなくなる。
私自身がけっこうドジなんで、もうそれを「ありのまま」見てもらうんでいいかなって思ってます。

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自分を出してみると「そっちのほうがいいじゃないか」と言われました

やはり、仕事とプライベートでは意識の切り分けがあるんですか?

私はあまり意識してないです。例えば、facebookは仕事用とか決めて、普段の自分を見せないって方がけっこういらっしゃると思うんですけど、私の場合はそれだと疲れちゃうんですよ。さっきも言いましたけど「ちゃんとしなきゃ」って思いながら生きるよりは、自分をさらけ出してた方が印象もいいみたいで。だからお客様にも普通になんでも喋ります。もちろん、常識の範囲内ですけどね。
料理のときとかはもちろん集中して作業していますが、お客様とお話してるときは頭の中はプライベートモードに近いかな。(笑)お客様と話してストレス発散できちゃうくらいですからね。(笑)

それは若い時からそうでしたか?

若いときは今よりもっと仕事仕事してました。休みの日も仕事したいって思うことがありました。だんだんと力が抜けてきて、それはなんでかな・・・。自分を取り繕うことがやっぱり苦手なのかな。
道後椿倶楽部のお客様は年齢層で言うと40代以上になります。やっぱりそうなるとどうしても緊張してしまうんですけど、相手が年配の方でも徐々に打ち解けていって自分を出してみると「そっちのほうがいいじゃないか」と言われることが多いんです。
ピシっとしなきゃいけないときはしますけど、あんまり仕事だからといって硬くなることがないようにしてます。
だから逆に、家で母と仕事の話もけっこうしますし、全然嫌じゃないです。

飲食業って派手に見えて実は地味だったりしますよね。
モチベーションを保つためにどういったことを意識していますか?

もうそれは絶対的に「お客様としゃべること」。お客様としゃべってモチベーションを上げていきます。だからお客様に救われることも多いんです。
例えば何かでストレスを溜め込んだとしても、お客様とお話しているうちに解消されていくみたいな。

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なるほど。
お母様ともすごい仲良しですよね。

そうですね。離れて暮らしていた期間も長かったけど、今は「友達」みたいな感じもあります。
ただ、仕事のこととなると意見が合わなくて母と口論になることもあります。時間をかけても自分の中で納得できないと、「さっきの話なんだけど」ってぶつけます。
母は私より大人ですから、サーッと上手く流してくれるんですけど、でもその流されるのも嫌なんですよね。(笑)だから徹底的に言いたいことちゃんと言ってスッキリするみたいな。
でもお互いそれを長いこと引きずるようなことはないです。

いいご関係なんですね。

母は相当我慢してくれてるのかもしれないですけど(笑)

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親子でやることは「強み」になる

お母様は尊敬してますか?

尊敬してます。めちゃくちゃ。
特にお客様とお話しているのを見ると「凄いな」って思います。会話の切り返し方とか。細かいところに気がつくところとか。
もうずーっと動いてますから。ずっと頭が回転してる。家でも休まないんですよ。お客様から「あんまり無理せず、早く隠居してねー」とか冗談ぽく言われてますけど、本人としてはまだまだやっていくつもりなんだと思います。

お店を継ぐことも意識されてますか?

この店を「継ぐ」っていうのを具体的に考えているわけではなくて、でもこの仕事は好きだから続けていくつもりです。ただ、今の時点では「継ぐ」ということを考えると不安になっちゃうかな。(笑)

今の仕事内容には満足されていますか?

そうですね。そもそも親子でやることは「強み」になると思います。やっぱり入り込みやすいしコミュニケーションも取りやすいし、お客様受けもいいんですよね。
一度母がどうしても外せない用事があって、道後椿倶楽部を私一人で回さないといけない日があったんですけど、もうどーしよどーしよってすっごい不安だったんですけど、その日は一生懸命やって、なんとか無事営業を終えました。
その日に来てたお客様から次の日お電話をいただいて、「すっごい良かった。娘さん頑張ってたってお母さんに言っといて」って言われて、「よかったー大丈夫だったんだー」って思いました。

でもその体験をして自分が普段母にすごい甘えてたってことがわかったんです。それが自分の中で嫌だったんで、「Bar営業」を始めたんです。
お店が休みの日に不定期でお酒だけを出すんです。

お酒だけ出すってどういうことですか?

ラストオーダーが終わった後に、いつもは11:00でお店を閉めるんですけど、1時まで延長して、フードの注文をストップしてお酒だけの営業をするんです。
で、今後はそのBar営業を定着させていこうかという話になってます。

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流れに任せて・・・ではなく、ご自分からチャレンジしていくということですね?

そうですね。
道後椿倶楽部で働き始めた最初の頃は、母の姿を見て見様見真似で仕事を覚えていったんですけど、ある程度できるようになってからは「母と同じことをやっててもいけないな」って思って。別に「超えたい」っていう考えではないんですけど、位置づけとして母とは「別キャラ」でいないといけないって考えるようになりました。
じゃあ何しようかって思って、まずは「利酒師(ききざけし)」っていう資格を取ったんですよ。ウチは日本酒たくさん置いてあるので、日本酒の知識をつけようと思って。

<利酒師とは(ききざけし)>
飲み手の好みや要望を察知し、日本酒とその楽しみ方を提供するプロフェッショナル。料理との組み合わせや、そのお酒に適した酒器選びにまで及ぶ。

こないだ酒蔵にも行きました。梅錦!
面白かったー・・・すごい興奮しました。(笑)もう近くに行くとお酒のいい香りがして。
私がお邪魔した日は今までにないくらいハプニング続きの日だったらしくて、みなさんがバタバタバタバタ動いているのを見てカッコいいなーって思いました。
杜氏さんがいろいろ説明してくださって、普通は出来上がってからしか口にできないですけど、途中段階の麹を食べさせてもらったりとか、とにかく楽しかったです。
ちょうど日本酒の勉強をしてた頃だったんで、知識とその時の体験が重なって楽しかったです。

学術的な「お勉強」に限らず、現場も見てきたわけですね。

今ってお客様もお酒の知識が豊富で、負けないようにしなきゃですし、お酒出す時もちょっとしたエピソードを添えて出すと、また違った楽しさも出るかなーと思って。
同じお酒でも、道後椿倶楽部で飲むとより美味しいみたいな・・・そういう風に思ってもらえるといいなって考えてます。
若い方はワインとかもけっこうお飲みになるので、そっちも勉強していこうと思っています。

仕事がお好きなんですね。

んー怠け者ですけどね。仕事は好き・・・ですね。どちらかというと仕込みとかの裏の仕事よりは接客とかのいわゆる「表舞台」が好きです。(笑)裏の仕事ももちろん一生懸命やりますけどね。

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4月10日から毎週金・土、「Bar椿倶楽部」をやります。

楽しいお話ありがとうございました。
では最後に告知などあれば、どうぞ!

そうなんです。(笑)
4月10日から毎週金・土、「Bar椿倶楽部」をやります。フードのラストオーダー(9:30)のあとに、ちょっと雰囲気変えて、照明落としてキャンドルとか炊いたりして1時までやります。

楽しみですね。
バーということは、カクテルとかも置くんですか?

カクテルはないんですけど、順次置いていく・・・かな?シェイカーは触れません!(笑)通常営業もあるので、そこまではなかなかできないので多めに見てもらいつつなんですけど。(笑)
母と私と2人で営業していきますので、是非一度いらしてください!

ありがとうございました!

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