【インタビュー】熊野憲之 Vol.01

【インタビュー】熊野憲之 Vol.01

32歳で父親が経営する養鶏場を引き継ぎ、熊野養鶏二代目社長として養鶏家の新しいポジションを確立。決してレールに敷かれた人生を歩むことなく、枠にとらわれない発想で挑戦を繰り返し、持ち前の突破力を活かしながら突き進んでいく経営者の現在に迫り、ルーツを探る。

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周囲の反対を押し切り、食堂併設

熊野さんの活動内容を教えて下さい。

いわゆる養鶏業ですね。
美豊卵というプライベートブランドの卵を、自動販売機を通じて直売しています。まあ、ただの「卵屋のおやじ」なんですけど。

創業が昭和30年ということは、二代目になるんですか?

そうですね。親父が創業で、ずっと養鶏一筋です。

社長に就任されたのは何年前ですか?

僕が32歳くらいのときだったかな?あんまり覚えてないなあ。(笑)

他にも商材がありますよね?

媛っこ地鶏っていうのもやってますね。ちょうど1年くらい前から試験的にやり始めまして。
お店のメニューの一つとして、親子丼みたいなのをずっと出したかったんです。
そのためには本来であれば親鳥のお肉を使って、親子丼にしたかったんですけど、親鳥のお肉を柔らかくするのに手こずりまして断念しました。
「じゃあウチが肉用の鳥を飼ったらいんじゃないの?」と思って、ちょうど愛媛県には県のブランドである媛っこ地鶏がありましたから、それを飼おうということで。
地鶏の飼育環境には規格があるんですけど、幸いウチにはちょっと手を加えればその規格をクリアできる飼育環境があったんで、始めてみました。
周りの反対はすごいもんでしたけどね。(笑)

反対されてたんですか!?

んー、やっぱりなかなか卵屋は卵屋で、そういう新しい発想にはなかなかいかないんですよね。「卵だけ売ってたらええやん」っていうね。
でも、媛っこ地鶏を導入するのにウチの場合は設備投資もかからないし、失敗しても痛手は少ないから。

このお店(熊福)はいつから営業されているんですか?

ここは平成20年からですね。もう8年目です。

どういうきっかけで始められたんですか?

物販のお店だけでは面白くないんで、プラスアルファなにかできないかなっていうのはずっと考えていました。養鶏家でないとできないプラスアルファのなにか、誰も真似できないなにかを。
で、とあるテレビ番組で卵かけご飯のお店が紹介されていたのを見て、「これだ!」と。
酪農家が卵かけご飯のお店をやってもしょうがないでしょ。ウチがやるから説得力が増すわけで。「もうこれしかない」と思って、売り場に食堂を併設することが、『私のなかで』決まりました。
まぁ〜これも相当なブレーキをかけられましたけどね、家族から。(笑)
みんなが反対する中、私一人で進めていました。父も反対してましたから。(笑)

周囲がそれほど反対する中で、こうやって実現されているのはすごいですよね。
相当な努力をされてきたんじゃないですか?

いや、言うこと聞かなかっただけです。(笑)「これはやるんだ!」と少し強引にね。
結果的には、話題性で言えばほぼ思ったとおりくらいの反響がありましたね。
週末になると必ず県外からのお客様がわんさか来てくださいます。おそらくこういった形態のお店は四国の中で唯一だと思うんで。

「美豊卵」誕生の経緯

卵食べ放題というのがいいですよね。

そうでしょ。卵屋なんで、そこらへんはケチケチせずに、アピールしたいですから。でも、こないだ夫婦で来られたお客さんが卵27個食べて帰ったんです!(笑)

よっぽど美味しかったんでしょうね!

喜んでくれるのは嬉しいですけど〜・・・ね。(笑)

美豊卵が生まれた経緯は?

父の代から改良を重ねながらやってたんですけどね、「名前を付けないとダメだ」と言い出して、「美味しい卵で豊かな食卓を」ということで、「美豊卵」という名前をつけたって話です。
戦後のころは養鶏技術が今ほどまとまってなかったので、良い卵の作り方を確立できれば、豊かな食卓の演出に役立つのではないかという考えでやっていたみたいです。

養鶏の技術を確立するって・・・、大変なことですよね?

まあ実験を繰り返しながらバランスを見るという感じです。こういうエサを与えれば、こういう卵が生まれるっていう情報がそんなにはなかったので、毎回毎回試行錯誤です。だいたい2〜3週間くらいで試したものが形になるので。
ちょっと思いついたことをちょっと試して・・・。やりすぎるとコストの問題も出てきますし・・・、バランスですよね。

すごくこだわった高級ラインみたいなものってあるんですか?

それはないですね。需要がないとやっぱりね。
でもこれからの作戦としてはそういう路線もアリかもしれないですね。
というのが、横浜の東急百貨店と取引があるんですが、こないだも行ってたんですけどね。そこの卵が6個入りで350円ですから1個55円くらいですかね。それでも買ってくれてましたからね。もう私が商品の説明をし終える前に買っちゃう人とかいました。
だから「特殊化」っていう路線はあるかなって思います。

今年は攻めると決めていた

養鶏場という枠にとらわれずに、いろんなところにチャレンジしていってて、そこが熊野さんのすごいところだなって思います。

そうですかね。まあ、普通が嫌いというか、あまり人がやらないことをしたいっていうのはありますね。
特に今は売上を上げるのにシャカリキになってるんですよ。鳥の飼育数が一番多いときは4万羽くらい飼ってたんですけど、いろいろあって今は3分の1くらいに減ってて、その中で効率的に数字を上げていくために、いろいろと工夫しています。
前々から2015年は「攻める」と決めていたので、どんどん自分から動いています。
僕らの業界でも、「いいものを作れば売れる」という時代ではなくなってきている感があって、生産者自らが自社の商品の良さを伝えていく努力をしないと厳しくなってきています。

今一番可能性を感じているのはどのあたりですか?

僕が今思っているのは、飲食店さんとの取引ですね。そこを増やしていこうと考えています。地鶏も含めてね。
ほら、「〇〇さんが作った野菜です」みたいな売り出し方が今浸透してきてるでしょ。そういうのが、飲食店さんにとっても差別化のポイントになってくるのではないかと思ってて。
だからウチの名前もどんどん使ってもらいたい。幸いにも四国で唯一農林水産大臣賞をもらっている養鶏場ですので、話題になりやすいと思いますし、安心して使っていただけますしね。
食材へのこだわりっていうのは飲食店さんにとっては一つの評価ポイントになるでしょうから、そういった面でも役に立てるのなら光栄ですね。

飲食店に対しての営業活動は愛媛県全域になるんですか?

まあそうですけど、実際に動いているのは近場ですね。松山の方とかは機会があれば行くこともありますが。
あと、既に直接生産者さんと取引をしているところは避けるようにしています。世間一般的に流通する卵の量ってのはそんなに変わらないんで、生産者同士で取り合いをしてもお互いの首を締めるだけになってしまう。そういうのはあんまりしたくないので、誰も生産者が入っていない近くのスーパーで卵を買っているような飲食店さんとかに限定してます。
取引自体は全国どこでも可能です。実際、地方発送という形をとって、東京や大阪にもかなりの数を送っています。
こないだも銀座三越さんから問い合わせがありましたよ。

じゃあ、問い合わせがあれば全国どこでも取引可能と。

そうですね、喜んで!
特に最近は人間関係のつながりを身にしみて感じてて、本当にありがたいですね。気にかけてくださる方が多くて。

後編に続く

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